Googleが提供するGoogleトレンドは、無料で簡単に検索トレンドをチェックできるツールです。

Web業界やマーケティングの関係者、さらには投資家などにもよく使われています。私も検索動向の調査やキーワード比較などを行うために毎日のように使います。

ところが、ときどきこのツールについて重大な思い違いをしており、検索動向について間違った判断をしてしまっている方を見かけます。

その思い違いとは、「Googleトレンドでキーワードを入力するとグラフ表示される人気度の動向は、そのキーワードの検索数を表している」というものです。

 

Googleトレンドの「人気度の動向」とは?

詳しく見ていきます。

まずはGoogleトレンドにて「人気度の動向」に関する注意書き(?アイコンをクリックすると表示される)を確認してみましょう。次の通り記載されています。

人気度の動向

数値は、特定の地域と期間について、グラフ上の最高値を基準として検索インタレストを相対的に表したものです。100 の場合はそのキーワードの人気度が最も高いことを示し、50 の場合は人気度が半分であることを示します。0 の場合はそのキーワードに対する十分なデータがなかったことを示します。

Googleトレンド

さらに、ヘルプページには次の記載があります。英文のみで、和訳は筆者のものです。

How is Google Trends data normalized?

Google Trends normalizes search data to make comparisons between terms easier. Search results are normalized to the time and location of a query by the following process:

・Each data point is divided by the total searches of the geography and time range it represents to compare relative popularity. Otherwise, places with the most search volume would always be ranked highest.

・The resulting numbers are then scaled on a range of 0 to 100 based on a topic’s proportion to all searches on all topics.

・Different regions that show the same search interest for a term don’t always have the same total search volumes.

(和訳)

Googleトレンドのデータはどう正規化されますか?

Googleトレンドは、用語の比較を簡単にするためには、検索データの正規化を行います。検索結果は、次のプロセスによってクエリの時点と地域に正規化されます。

・相対的な人気度を比較するために、各データポイントは、該当する地域と期間の総検索数で割り算されます。そうしないと、最も検索数の多い地域(や期間)が、常に高くランクされてしまうからです。

・その結果の数値は、全てのトピックに対する全ての検索に対する、あるトピックの割合に基づいて、0から100の範囲に調整されます。

・ある用語に対して、同一の検索の人気度合いを示す地域があったとしても、検索数も同一ではありません。

Googleトレンドのヘルプページ「FAQ about Google Trends data」

どちらの説明も、少しとっつきにくく感じる方もいらっしゃるかもしれません。

嚙み砕いて説明すると、グラフ上に表示されるデータは、あるキーワードの検索数(ユーザーがキーワードを入力した回数)ではなく、Google全体の検索に対するそのキーワードの検索の割合を相対的に表したもの、ということです。

また、割合はパーセント等ではなく、最も割合の多かったときを100として、0から100の間で示されます。

仮に、あるキーワードの「人気度の動向」が、ある時点で100あり、その1か月後に80に下がっていたとしても、決して検索数が20%下がったわけではないことになります。むしろ検索数としては増えている可能性もあります。データは、地域や期間、カテゴリなどの指摘した条件におけるGoogle検索全体の利用度によって調整されるためです。

 

検索数を知るには、Google広告のキーワードプランナーを利用するしかない

では、実際の検索数を知るにはどうしたらよいのでしょうか。

そのためには、Web広告界隈の人にはお馴染みになりますが、Google広告のキーワードプランナーというツールを使います。

キーワードプランナーの「新しいキーワードを見つける」という機能でキーワードを入力すると、そのキーワードの過去の検索数や、Google広告の競合性などのデータを取得できます。無料ユーザーの場合は、データは一定の幅でしか取得できませんが、一定額以上をGoogle広告に出稿していると、正確な実数のデータを取得できるようになります。

 

Googleトレンドとキーワードプランナーの実データ比較

次に、GoogleトレンドとGoogle広告のキーワードプランナーそれぞれの実際のデータを比較してみます。

キーワードは「デジタルマーケティング」とし、月次のデータが取得できるように期間を調整して比較します。

・Googleトレンド

直近で人気度100をマークした2022年4月だけが突出して高くなっています。グラフでは実数がわかりにくいため、前後の実際のデータを記載します。

2022年1月:65
2022年2月:67
2022年3月:79
2022年4月:100
2022年5月:72
2022年6月:67

・キーワードプランナー

こちらではGoogleトレンドより横ばいに推移しています。比較ができるように同期間の月間検索数のデータを記載します。また、不必要な関連語の検索は除外しています。

2022年1月:14800
2022年2月:12100
2022年3月:12100
2022年4月:14800
2022年5月:12100
2022年6月:14800

いかがでしょうか。

キーワードプランナーでも2022年4月の検索数は多いですが、1月、6月と同水準であり、Googleトレンドの推移とは全く異なります。

また、2022年2月はGoogleトレンドでもキーワードプランナーでも低めに出ていますが、2022年4月と比較すると、Googleトレンドは67%なのに対して、キーワードプランナーは約82%と、とても大きな違い生じています。

もしGoogleトレンドを見て「デジタルマーケティングの人気は2022年4月に急上昇したけど、すぐに元の水準にまで戻っている」とみなしたら、大きな判断ミスを犯していることになります。

以上の例を見れば、「Googleトレンドのデータを検索数とみなす」ことの危険性がよくわかると思います。

もちろん、Googleトレンドが決してダメなツールというわけではありません。2004年からという長期のデータを利用できますし、キーワードや地域ごとの人気度合いをおおざっぱに比較する等の用途ではとても力を発揮します。適材適所で使い分けていくことが必要です。

 

Googleトレンドのマッチタイプ

最後に、補足としてキーワードのマッチタイプについて触れておきます。Googleトレンドのヘルプページにて、句読点の使い方として次のように説明されています。

  • 「tennis shoes」と入力すると、テニスと靴を含む任意の順序の検索のデータが含まれる。「red tennis shoes」「funny shoes for tennis」「tennis without shoes」などが該当する。
  • ダブルクオーテーションをつけて「”tennis shoes”」とすると、正確なフレーズの検索や「red tennis shoes」のように前後にワードが付加された検索のデータが含まれる。

Googleトレンドのデフォルト(キーワードをそのまま入力)は、Google広告におけるフレーズ一致に近く、ダブルクオーテーションを付けると完全一致と同等かやや広いキーワードがカバーされると推測されます。

一般的な利用の仕方ならこのマッチタイプの違いまで考慮しなくても良さそうですが、厳密には差異があることは頭の片隅に入れておいても良いかもしれません。

その他にもヘルプページで参考にある情報が見つかることがあるので、もっと知りたい方は見てみてはいかがでしょうか。もっとも、Google流に極めてコンパクトかつわかりにくい内容が多いため、日本語の一般メディアでもっと情報が増えていくことを期待しています。