コンテンツマーケティングという言葉がかなり浸透してきており、多くの企業がオウンドメディアや公式ブログを開始しています。ライティングの経験が少ないのに、突然記事を書く機会がやってきて困ったことがある方も多いのではないでしょうか。

読みやすく役に立つブログ記事を書くためには、ライティングのスキルやSEO(検索エンジン最適化)など、様々なノウハウが必要になります。とはいえ決して難しい専門知識が必要なわけではなく、基本をおさえれば誰でも習得可能です。

最近、エンジニアの方向けに、オウンドメディア向けのブログ記事で成果を出すためのライティングの鉄板ノウハウをまとめたので、当サイトでもその要約を紹介します。

記事のテーマと構成を考える

まずはテーマとキーワードの選定から

テーマ(主題)

最初に行うことはブログのネタ、つまりテーマ(主題)の決定です。テーマは、以下のどちらかまたは両方を満たすことを意識しましょう。

  • 有用性がある(読者にとって役に立つ)=useful
  • 感情(喜怒哀楽)を動かすことができる=fun

Webコンテンツは結局のところ役に立つか=useful、面白いか=funのどちらかで評価されます。この2つをどこまで実現できるかがWebコンテンツの価値の本質です。

なお、テーマの決め方に関しては、決まったルールはないし、「このような方法を取れば必ず当たるネタを発想できる」という法則もありません。各自が自分の知識や経験、センスで考える必要があります。

ただし、どんなジャンルの記事にするにせよ、人気の出るブログ記事には以下のような共通項があることが多いので、意識するとよいと思います。

  • ネット上で集めた情報や誰かから聞いた情報ではなく、自分自身が経験したナマのエピソード。また、そのような実体験から得られた、他にはないオリジナルな情報やノウハウ
  • ある分野に関する長年の経験や研究から培った、わかりやすい理論やメソッド、知識の体系

キーワード

続いて、テーマを端的に表現するキーワードを決定します。これが検索エンジンで上位表示を狙うキーワードであり、集客の軸になるものです。

キーワードは以下のいずれでもよいです。

  • シングルキーワード(「パソコン」など単語1個か、「パソコン比較」などの連語)
  • 複合キーワード(「パソコン 法人」など2つ以上の単語)

一般的に、以下のようなものが狙うキーワードが代表例になると思います。

  • 商品名、サービス名などの固有名詞
  • 「費用」「比較」「クチコミ」「導入事例」など、よく使われる一般キーワード
  • 上記の関連キーワード(Google検索のキーワード入力補助機能や、関連キーワード枠で表示されるキーワードが参考になります)

逆に、読者が使いそうなキーワードを先に決定し、そのキーワードに沿った内容を検討するという考え方も非常に有用です。

どちらかの方法で、記事のテーマとキーワードを決定します。(筆者の場合は、基本的にテーマをキーワードをセットで考えます。先にテーマだけなんとなく決めてしまうと、「テーマは面白いけど集客しにくい記事」が生まれる可能性があります)

なお、一般的なSEOでは、顧客のニーズや課題の分析、キーワードとコンテンツの需給バランスの調査、重要度別・フェーズ別・詳細度別の段階的な目標設定など、多角的な分析や工程を経ますが、今回はブログ記事単体のノウハウのため省略しました。

記事が読まれるかどうかはタイトルで決まる

記事の入り口はタイトルです。タイトルで興味を引くことに成功しなければ、そもそも記事の内容を見てもらうことはできません。そのため、ブログ記事作成全体の中でもタイトル作成は最重要の要素となります。

読者の興味を惹くためには、タイトルを読んだだけで「楽しめそう」「自分にとって役に立ちそう」と思ってもらう必要があります。

そんなタイトルを作るコツとしては次のようなものがあります。

  • タイトルの最初に、狙うキーワードを入れる

できるだけタイトルの最初の方に、狙うキーワードを入れます。後ろにいくほど読者の目に入りにくくなったり、省略されて表示されにくくなるためです。キーワードがタイトルに入っているかどうかで、検索順位はまったく異なる上に、検索結果に表示された際のクリック率も大きく変わるため、忘れずに入れることが大事です。

逆に言うと、タイトル(とそこに入れたキーワード)から記事の内容を考えていく、という考え方も重要です。

  • 明確なメッセージ

ブログ記事は基本的にワン・メッセージ、つまり記事全体として1つの主旨にフォーカスした内容であるべきです。タイトルは、そのワン・メッセージを端的に表現したものばかりでなければなりません。

  • 内容をすぐに理解できることが伝わる

難解そうなイメージを持たれると記事は読まれません。タイトルだけで「すぐに楽しめそう」「すぐに役に立ちそう」「必要なことがすぐに理解できそう」と思ってもらう必要があります。

理解のしやすさをアピールするためのお馴染みのテクニックは「数字を入れること」です。タイトルに「必ず訪れたいスポット3つ」「5つのコツを覚えれば誰でも~ができる」などとあれば、記事を見る前から「3つのスポット、5つのコツをチェックしさえすれば済むんだ」と、伝えることができます。

なお、タイトルの文字数は、検索結果における視認性から、「全角32文字程度以内」とするのが良いと言われています。

また、以上の考え方の原則は、ブログ記事のタイトルだけではなく、コンテンツ一般やマイクロコピー(Webサイトやアプリで、ユーザーに行動を促すUIとして使われる細部のコピー)にもあてはまります。

hタグ(見出し)も次に重要

hタグ(見出し)はページの目次に該当します。hタグの一覧を見ただけで、ページの内容や流れをおおまかに把握できるのが理想的です。

また、Googleはhタグに入っているキーワードを、そのページの中で重要なキーワードだとみなすため、狙うキーワードをhタグに入れるのが有効です。

h1/h2/h3~の順番で重要度が高いため、重要度の高いキーワードからh1に入れていきます。

ただし、hタグに入れなければ絶対に上位表示しない、というわけではありません。

キーワード出現頻度も考慮したい

狙うキーワードを、ページの中で最も出現頻度の高いキーワードにすると、そのキーワードで上位表示しやすくなります。

ただし、過剰に詰め込みのは禁物で、一般的には多くとも5%くらいにとどめておくとよいと言われています。

効果されているキーワードの出現頻度は、以下のようなサイトで調べることができます。

キーワード出現率チェック

なお、Googleの自然言語処理や機械学習などの技術の発達により、昔よりもキーワード出現頻度の重要性は下がっていると言われることもありますが、その根拠がGoogleからアナウンスされているわけではないので、知っておいて損はないと思います。

アイキャッチが必要

記事のファーストビュー(ページを開いてすぐに視界に入る範囲)を見たときや、SNSなどでリンクが表示されたときに、テキストばかり表示されていると読者が興味を失います。

読者のアイキャッチ(視線を惹きつけること)のために、サムネイルやファーストビューに表示される画像を設定するのがおすすめです。

画像は、記事の内容に沿ったものや、雰囲気の合うイメージ写真などを入れます。後者の場合は以下サイトなどが無料かつ商用利用可能なので有用です。

写真AC

これはあくまで一例で同種のサイトは他にもたくさんありますが、著作権違反・ライセンス違反にならないように注意しましょう。

また、画像の容量が重いとページの表示速度が悪化して、Googleからの評価が下がります。できるだけ容量を小さくしましょう。

読みやすい文章を作る

論理構成(ロジカルシンキング)に気を付ける

他社のブログ記事を見ると、伝えようとしている内容の論理的構成がよくわからないため、内容を理解しにくくなっていることがよくあります。

内容自体の難しさと、文章の複雑さを混同していはいけません。場合によって内容自体が難しくなることはやむを得ませんが、文章の複雑さは書き手の思考が混乱から生まれます。

そうならないためには、文章を直そうとする前に、時間をかけて思考をクリアにし、伝えたいことの構造や因果関係を明確にしましょう。それができた後に、文章の構成を考えましょう。

一般的には「ロジカルシンキング(=クリティカルシンキング)」と呼ばれる分野が、このような課題を扱っています。

logicalthinking.png (131.0 kB)
ロジカルシンキングの全体像(出典:株式会社ハートクエイク)

ロジカルシンキングの書籍に関しては、私が昔読んだ限りでは以下がよくまとまっていて参考になりました。類書もたくさんあるので、ぜひ自分に合うものを調べてみましょう。

問題解決プロフェッショナル―思考と技術

グロービスMBAクリティカル・シンキング

読者の目線に合わせる

専門的な分野を扱う文章でありがちなのは、「専門家に向けた説明」「わかっている人同士の議論」をしてしまうことです。

技術文書や論文ならそれでもよいのですが、一般的なブログ記事はそうではありません。ほとんどの場合、今後顧客になってくれたり、会社のメンバーになってくれたりする可能性のある人に読んでもらうことが目的のはずです。

そのため、記事が目指すのは「今までわからなかった人が、記事を読むことによって、わかるようになる」ことです。「わからない」から「わかる」への変化をどのくらい生み出すことができたが、記事の持つ最も本質的な価値です。

そのような記事を書くためのポイントとしては、以下があります。

  • 基本的な概念や用語をいきなり使わない
    • わからない概念や用語が一定以上あると、読者はそこで興味を失ったり、読むのを止めたりしてしまいます。読者がわからない可能性のある概念や用語を使う際は、必ず簡単な説明を入れてから使うようにします。
  • 専門用語の表記を整理する
    • 記事中に用語の混乱があると、既にわかっている人はなんとなく想像することで主旨を理解できても、そうでない人は全く意味が取れなくなることが多いです。身近な例で言えば、「スマートフォン」「スマホ」「スマホ端末」「SP」などの表記の揺らぎはよく起こります。どれか1つに統一しましょう。

「一文一意」を守る

一文にたくさん意味を詰め込み過ぎたり、一文が長くなると、意味をとりにくくなります。

そのため、原則として「一文一意」を守り、一文をできるだけ短くすることが、読みやすい文章を書くコツです。

主語と述語を明確にする

一文の中で主語が入れ替わってしまい、読みにくくなることがよくあります。一例を挙げます。

ページの右上にあるメニューボタンを押すと、コンテンツの一覧を表示します。

一読するとなんとなく意味は読みとれますが、よく考えると不自然なことに気付くこと思います。その理由は、前半の「ページの右上にあるメニューボタンを押すと」の主語は人であり、「コンテンツの一覧を表示します」の主語はページないしはWebサイトだからです。一文の中で主語が入れ替わっている上に、どちらも明示されていないため不自然な文章になっています。自然な文章に修正した例をいくつか挙げます。なぜ自然な文章になったのか考えてみてください。

ページの右上にあるメニューボタンを押すと、コンテンツの一覧を確認でききる。

ページの右上にあるメニューボタンが押下されると、コンテンツの一覧を表示します。

無駄を省く

無くても意味が通る表現、文章に意味を付加しない表現は省きましょう。無駄を省けば省くほど、読みやすい文章になっていくことが多いです。

よく使われがちな無駄な表現の例には「という(こと)」があります。1度だけなら気になりませんが、複数回連続して登場すると、冗長で読みにくくなります。

誰かに質問するということも重要です。

次にように修正できます。

誰かに質問するのも重要です。

このように、一文だけではなく文脈を、木だけではなく森を見て考えると、意味を取りやすい文章になります。

曖昧な表現を連続して使わない

曖昧な表現を連続して使うと、文章が読みにくくなったり、主旨を理解しにくくなりがちです。曖昧な表現をなるべく使わなくてもいいように、十分に物事の調査・検討を行った上で、正確な文章を書くようにしましょう。

曖昧な表現の例として次のようなものがあります。

ほとんど
~など
~くらい
まあまあ
だいぶ
ほぼ
だいたい(大体)
どちらかというと
おそらく
きっと

推敲・校正を繰り返す

文章は、自分ではどんなにちゃんと書けたと思っても、間違いが無限に潜んでいるものです。推敲と校正を重ねて、読みやすい文章にしましょう。以下のような工夫は役に立ちます。

  • 別の人に読んでレビューしてもらう
  • 翌日など、時間をあけて読み直す
  • 印刷して確認するなど、媒体を変えて読み直す

推敲・校正を行う際は、以下のような点に注意しましょう。

日本語の間違いやすい点

校正のポイント説明
一文一意つの文章はできるだけ短く、1つの意味だけを表現すると読みやすいです。
句読点の利用「、」「。」を適切に、リズム良く使うと読みやすいです。
助詞・助動詞の利用「てにをは」、「たり」を適切に利用しましょう。Word等の校正ツールも検出してくれることがあります。
受動態ではなく能動態例えば、受動態「データが送信される検証が行われた」より、能動態「データを送信する検証を行った」の方が意味をとりやすいです。
文体の統一ですます、だである、口語などを記事の中で統一させます
表記の統一固有名詞、専門用語、カタカナと英語、漢字とひらがななどを記事の中で統一させます
「の」を使い過ぎない例えば「健太の兄の大輝のお気に入りのレストラン」は「の」が4回も使われており読みにくいです。2回までに留めるのがよい言われています。
二重否定を使わない例えば、「買えないこともない」ではなく「買える」としましょう。

最後まで読まれる(直帰率が低い)ことが大切

前述の通り、記事のテーマが読者の興味を惹き、アイキャッチや論理構成などができ、読みやすくできた記事は、最後まできちんと読まれやすいです。

GoogleはWebページの滞在時間を間接的に取得していると考えられています。(検索エンジンの利用傾向からWebページの滞在時間を推測する特許を取得しています)

そのため、滞在時間が長い(直帰率が低い)ページほど上位表示しやすいと考えられます。

記事の質をチェックする

今まで説明してきたことは、マニュアル化したり、論理的に分析したりすることが可能な客観的な基準です。ところが、読者にとっても、SEOにとっても本当に重要なのは「記事の質」です。

そうはいっても、「記事の質」は目に見えるものではなく、読み手の心の中に生じる印象なども含むため、質の良し悪しを簡単に評価することができません。

そこで有用なのが、次のページでGoogleが紹介している「記事の質」に関する質問事項です。

Google のコア アップデートにいてウェブマスターの皆様が知っておくべきこと

記事を執筆したら、この質問事項を見返して自己批評をしてみましょう。ほとんど100%と言っていいほど、「この視点がなかった」「あの要素を満たしていない」と感じる点が見つかるはずです。リリース後でも構わないので、質の向上に向けて継続的に改善をしましょう。

また、質問事項は自分で使うだけではなく、第三者にレビューしてもらうときにもとても役に立ちます。私の経験上、「記事の質はレビューをしてもらった人数に比例する」と考えてよいと思います。

効果測定を行う

ブログ記事の効果測定について簡単に記しておきます。

いきなり具体論に入る前に、そもそもなぜ効果測定を行うのか?ブログ記事にとって効果とは何か?について認識を合わせる必要があります。

効果測定を行う理由は、ブログ記事を執筆し公開する目的をどの程度達成できているかを知るためです。

ほとんどのオウンドメディアの目的は、自社やブランドの認知・理解の拡大、さらにインバウンド獲得などです。それをふまえると、記事1つ1つの直接的な目的は記事のテーマについて興味関心を持っている人に「訪問(=記事ページへの露出と流入)」してもらい、「記事を読んで(=閲覧・消費)」もらうことです。

そのため、この目的に沿って各記事の「露出」、「流入」、「閲覧・消費」を定量的にチェックしていくことが効果測定において行うことになります。このそれぞれの観点については、「コンテンツの価値をどうやって測定するか?記事・動画の定量分析の考え方」で解説しています。

以上、ブログ記事のライティングにおいて知っておきたいことを簡単にまとめました。ご参考になれば幸いです。