私は日頃、いろいろな企業にSEOやコンテンツマーケティングの提案をさせて頂いていますが、提案をして「なるほど!」と思って頂きやすいポイントの1つが、SEOの世界に独特の「ターゲット拡張」と、それに付随する「ロングテール」の考え方です。

通常のWebマーケティングの流れでは、ターゲット(ペルソナ)を定めて、Web広告を出稿したり、コンバージョンを促すコンテンツを制作したりします。リスティング広告を出稿する場合は、ターゲットが使うキーワードを特定して、そのキーワードに対して広告を表示していきます。基本的に、検索数が多いキーワードを狙っていくことが通例です。

(なんと当たり前のことを、と思われるかもしれませんが)リスティング広告を含めたWeb広告を出稿する際、ターゲットに設定するのは「見込客」です。自分たちのサービス・製品に対して、顕在的あるいは潜在的なニーズを持っている人に対して広告を配信していく、という考え方をします。Web広告にもターゲット拡張(オーディエンス拡張)の概念や機能がありますが、度合いの濃淡はあれど基本的に「見込客」をターゲットにしていることは変わりません。(もちろん、ターゲットを一切考えないブロード配信を行うこともあります。あくまで原則的な話になります。)

SEOにおけるターゲット拡張とは?

このようなWebマーケティングの常識に反するのが、SEOにおけるターゲット拡張です。SEOにおけるターゲット拡張とは、サービス・商品の見込客だけではなく、その周辺のセグメントとなる、見込客ではない人、あるいは将来的に見込客になりそうにない人もターゲットに含めて、SEOの施策を打っていくことを指します。最終的な目標が見込客に訪問してもらい、コンバージョンに繋げることであることは当然否定しませんが、そのためのステップとしてターゲットを拡張するのです。

この考え方の根拠は、SEO専門家のコンセンサスとして、Googleには以下のようなアルゴリズムが存在することがわかっている点です。

Googleは、検索結果からのトラフィックや、他社サイトからの被リンク(バックリンク)が多いWebサイトほど高く評価し、上位に表示する

そのため、自社サイトが見込客だけを狙っていると、多様なターゲットに向けてコンテンツを提供する競合サイトと比較して十分なトラフィックや被リンクを確保することができず、上位表示できないのです。多様なターゲットを考慮し、それぞれのターゲットの課題やニーズに合ったコンテンツを作っていく必要があります。その結果、最終的な目標である見込客に訪問してもらえるようになります。これがSEOを成功させる最重要ポイントの1つです。

ターゲット拡張の例

例として生命保険会社のSEOを挙げます。生命保険会社がSEOを行う最終的な目標は、Webサイトからの生命保険の申し込みを増やすこととします。

Webサイトのトップページの目標キーワードを「生命保険 申し込み」と設定します。ところが、「生命保険 申し込み」で検索する人は既にニーズが顕在化した人だけであり、ボリュームとして大きくありません。このようなキーワードだけを狙っていたのでは、Webサイト自体の評価が上がらず、結局は目標キーワードでの上位表示を行うことが難しいのです。

この問題を解決するのがターゲット拡張です。見込み客以外の人に向けたコンテンツを制作し、Webサイト全体のトラフィックや被リンクを確保するわけです。例えば、以下のような施策が考えられます。

・「既に生命保険を契約しており、保険金の請求を考えている人」に向けて、生命保険の請求に関する基礎知識や手順を説明するコンテンツを作り、検索キーワード「XX生命保険 請求」での流入を図る

・「保険代理店のスタッフ」に向けて、自社の保険商品や販売スキームに関する解説コンテンツを作り、検索キーワード「生命保険 販売代理店」での流入を図る

・「生命保険会社への転職を考えている人」に向けて、生命保険会社の現役社員のインタビューやキャリア採用職種の解説を行い、検索キーワード「生命保険 転職」での流入を図る

上記のようなコンテンツを継続的に提供し、品質改善も行うことで、Webサイト自体の評価やトラフィックを増加させ、Googleでの上位表示を実現します。その結果として、生命保険を申し込む可能性のある、真の見込客にも訪問してもらえるようになるのです。

ターゲット拡張例の図解

今回ご説明したターゲット拡張の考え方を理解頂ければ、SEO活動の見通しが一気に明るくなり、次にどんなアクションをすればよいかが明瞭になるはずです。

ご質問や不明点があれば、ぜひ筆者までお問い合わせください。